『異色経営者が語るヒット連発の経営術②アイリスオーヤマ大山健太郎社長』日経BPムック【書評】

血で血を洗う国内市場を主戦場に、徹底した顧客目線で「顕在化していないニーズ」を見出してヒットを連発している四人の経営者+αを紹介する日経ビジネスのムック本。

二人目は園芸・収納・ペット用品などの生活日用品から家電・LED照明まで事業拡大を続けるアイリスオーヤマ大山健太郎社長。デフレ・円高・資源高の「失われた20年」の間に売上高を3倍に伸ばしたその原動力を語る。

アイリスオーヤマの躍進を支えた経営哲学

父親の急逝で19歳で5人の町工場を継いだ大山社長は「脱下請け」を図るためにニッチ分野に進出し業務を拡大したが、70年代の石油ショックにより原材料費が高騰し倒産の危機に瀕した。その時悟ったのが「会社は永遠に存在しなければならない」という経営哲学だ。

この哲学に基づき、「いかなる時代環境においても利益の出せる仕組みを確立すること」を企業理念に掲げた。そして、顧客に新たな価値を提供して、生活スタイルを変える商品を生み出すという「ユーザーイン(顧客の不便解消)」の会社に変革を遂げた。

大山社長の考える変化対応のコツ

時代環境の変化に会社が対応するには、下記のようなコツがあると述べている。

経営者は顧客の代表であれ

商品開発における価格決定や発売時期などはメーカー側の都合ではなく、顧客の視点にたって開発者に意見する。

会社は社会の変化に対応できなければ生き残れない

永続のカギは変化対応度でこれは新商品比率に反映される。ロングライフ商品への依存は企業が思考停止に陥り、大赤字の元凶になる場合もある。アイリスオーヤマの新商品比率は驚異の6割を占める。

変化対応に基づいた新事業参入の判断基準

新事業に参入する場合、①自社の強みが生かせるか、②(今ではなく)将来性があるか、③収益性が高いか、④競合に比べて優位性があるか を判断基準にする。

アイリスオーヤマの利益を生み出す新たな”仕組み”

オンリーワン商品で新たな市場を創出してきたアイリスオーヤマが今、力を入れているのが4つの「再生」だ。

  1. 人材
    シャープやパナソニックなどの大手家電メーカーの経営危機で削減された技術者を中途採用して再活用した。
  2. 商材
    エチケットブラシを付けたサイクロンクリーナーなどユーザーイン(顧客の不便解消)の発想で既存商材に付加価値を付けてヒットさせた。
  3. 売り場
    顧客との信頼関係が強い町の電器店とタッグを組んで「量販店に足を運ばない客」市場を手に入れた。
  4. 会社
    会社の仕組みをアイリス流に変えて破綻した企業を高収益企業に再生させた。

アイリスオーヤマの「士気を高める仕組み」とは

2012年尖閣諸島の国有化が引き金となり、中国にある日系企業の工場や店舗で暴動や襲撃が起こったが、アイリスオーヤマの現地事業所ではストライキすら起こらなかった。その大きな要因は従業員目線で考えられた「士気を高める仕組み」の存在だ。

アイリスオーヤマでは、①人事評価が従業員を育てるためのツールになっているか、②自分が従業員の立場ならどんな人事制度を望むか とい2つの視点で、「PDCC」「360度評価」「論文作成」「イエローカード」「金銀銅メダル」などのユニークな人材育成制度を取り入れている。

小さな無駄が生む大きな利益

経営手法として「選択と集中」が主流だが、無駄を削ったようでいて実は次なる伸びしろの芽を摘んでしまっている場合もあると考え、大山社長は「必要な無駄」を大事にしている。

例えば、アイリスオーヤマの国内外の工場は稼働率をすべて7割未満に抑えている。この結果、新型インフルエンザ時のマスクや震災後のLED特需に増産対応が出来て売上拡大に貢献できた。このようにライバルがしない無駄にこそ、次なる成長のきっかけがあると述べている。

ヒット商品を生み出す原動力

アイリスオーヤマの特記すべき点は、LED照明や家電などの強豪がひしめく既存市場に後発参入しながらも、ヒット商品を次々と生み出している点だ。その原動力は「ユーザーイン(顧客の不便解消)」の発想で、迅速に商品を開発し続ける仕組みとそれを支える従業員を育てる仕組みの存在ではないだろうか。

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