「黒霧島5000日戦争」霧島酒造躍進のヒミツとは!?【日経ビジネスNo.1765】

1990年代後半以降のデフレ下にあって、売上高を98年81億9,300万→2013年565億7,600万と15年間で約7倍に拡大した霧島酒造の躍進のヒミツを特集。 ▶︎日経ビジネス「黒霧島5000日戦争」特集ページ(ログインが必要) デフレが加速した過去15年間に独立系製造業でここまで業容拡大したのは極めて稀有な事例で、収益力を示す売上高経常利益率(過去10年平均)も14%と大企業の数値を3倍近く上回っている。 また、主力ブランドである「黒霧島」の発売から14年後の2012年には焼酎業界首位を奪取。更に翌年には全国9地区すべてで10%以上のシェアを確保するなど快進撃を続けている。

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全国制覇を支えた霧島酒造の戦術とは?

全国制覇を成し遂げた霧島酒造5000日の軌跡には以下の6つのキーになる戦術があった。

1.【戦略立案】「弱者の戦略」で一点突破

本来なら既存商品を武器に営業エリアを拡大しつつ、勝てる戦略商品を開発する順番が低リスクだが、霧島酒造はリスク覚悟でまず先に県外市場で勝てる戦略商品「黒霧島」の開発に資源を集中した。 この戦略は弱者が強者に勝つ上で「経営資源を集中する」ことの重要性を説くランチェスター法則の応用とも言える。(参考:「ランチェスター経営戦略」書評

2.【商品開発】トレードオフ・マトリックス

霧島酒造の飛躍のカギとなったブランド「黒霧島」は、「芋焼酎だから芋臭くないといけない。」という従来の考えを捨てて、「森伊蔵」「魔王」など幻の焼酎のような芋の香りを抑えて上品な味わいの焼酎に仕上げた。 当時、「芋風味を弱くする」か「大量生産する」かのトレードオフ(二者択一)だった焼酎業界の構図を打ち破って、「芋臭くないメジャー焼酎」という新ジャンルを作り、女性や芋焼酎が苦手な層を一気に開拓することができた

3.【営業販売】インパクト重視型フリー戦略

無料体験後のフォローで収益を上げていくという「フリー戦略」そのものは多くのメーカーが実施しているが、霧島酒造のフリー戦略は通常ではあり得ない意外な方法だった。 具体的にいうと、一般的なフリー戦略であればお酒は「夜」「繁華街」で配り、「自宅」で試してもらうというのが常道だが、霧島酒造は「朝」「駅前」で配布し「職場に持って行かせる」という戦略で拡散効果を倍増させることに成功した。

4.【生産体制】価値逓増型サプライチェーン

霧島酒造では「冷凍芋」を活用することで前代未聞の通年での芋焼酎生産を可能にした。また、原料の芋を安定的に確保する目的で農家を囲い込むことにも成功した。 通常、自動車業界などの下請けは絶えずコスト削減や値引き要請にさらされるが、霧島酒造は芋を面積単位で買い入れる独自の方針を採用したため、農家は豊作•不作に関わらず、安定的に利益が得られる「ウインウイン」の関係を構築し通年大量生産を可能にした。

5.【設備投資】市場創造型逆張り投資

過去に日本の半導体メーカーがこぞって大型投資を行った結果、供給過剰に陥って総崩れしたように「需要の後追い型の投資」は失敗することが多い。 これに対して、霧島酒造は逆張りの視点で、自社で市場を創造できると判断したタイミングに大型投資を行い、焼酎業界が不況の中でも売上を大幅に伸ばして競合を引き離すことに成功した。

6.【設備投資】横展開式ドミナント戦略

「黒霧島」ブランドで博多を攻略した後、敢えて同サイズの都市である広島と仙台を攻めて、大消費地である首都圏と関西の開拓は後回しにした。 これは大消費地はヒットすればうまみが大きいが、販促費や人件費などリスクも大きいためでランチェスター法則の弱者の戦略にも通じると言える。

大企業の手本となる「クロキリ戦略」と今後

宮崎から焼酎文化の壁を越えて全国制覇を成し遂げた霧島酒造の「クロキリ戦略」が大企業のグローバル戦略に大いに参考になるという。 その理由は、「黒霧島」開発にみるマーケットインの発想による商品開発と異文化エリアにおける商品の魅力の伝え方が海外に進出し文化や言葉の壁を越えて商品を販売する大企業のグローバル戦略と類似しているからだ。 芋焼酎で全国シェア4割を占める霧島酒造の次なる目標は売上高1000億円。人口減少や若年層の焼酎離れなど環境変化はますます激しくなる中、どのように成長を続けていくのか気になるところだ。

【2015.9.19追記】日経ビジネスの記事に大幅加筆して単行本が刊行されていました。創業前からの歴史や、霧島酒造の飛躍を支えた社員のインタビューなどもあり、より詳しく「奇跡」の軌跡を知ることができました。